私見、ベトナムのこと、ベトナム語のこと ①
色々とバタバタしてしまい、ホームページの更新が止まっていましたが、復活したいと思います。
さて、6月から風人土学舎の日本事務局の私、高木とベトナム事務局のティエンさん、私たちが継続してきた「学びでつなぐ~絵本の翻訳・読み聞かせ~」活動で協働し、そして今は筑波大学の博士課程に留学しているハイン先生の3名で日本の大学生にベトナム語を教えています。と、言いましても、私が入院したりしてまだ2回しか講座を開けていないのですが・・(この講座はベトナムともつなぐのでオンライン開催です)。このベトナム語講座は、摂南大学のPBL(Project-Based Leaning)プロジェクトの1つの中で行っています(リンクのページの中の「プロジェクト名:ベトナム中部貧困地区での古絵本を活用する学習支援(ベトナム絵本プロジェクト)」が私たちも参加している科目です)。単位がきちんともらえる科目なのです。何回か講座をお休みしたので、その埋め合わせではないですが、しばらく「私見、ベトナムのこと、ベトナム語のこと」を書いていこうと思います。
ベトナム人は好奇心が旺盛
ベトナム人と話をすると質問攻めにあいます。絶対に聞かれることは「何歳ですか?」、「家族は何人?」、「結婚している(彼女/彼氏)はいるの?」、「出身はどこ?」でしょうか。あいまいに返事をすると「なんで?(答えてくれないの)」と食い下がられます。日本人からすると「それはプライバシーの侵害です」といいたいこともどんどん尋ねてこられます。で、この質問攻めは、あらゆる人からされます。食堂のおばちゃん、シクロ(自転車タクシー)の運転手のおじちゃんなどからもされるのです。
ベトナムで暮らしはじめたとき、正直いって不快に思ったこともありました。でも、「そんなに言ってくるなら楽しもう」と切り替えて、たまに行く位の食堂のおばちゃんや通勤途中で客待ちしているシクロのおじちゃんにはウソを答えるようになりました。
「あんた何歳なの?」
「(当時30歳後半)33歳」
「結婚しているの?」
「うん、韓国人の旦那さんがいる(ウソ、私は独身)」
「子供はいるの?」
「うん、3人。旦那のお母さんが育ててくれているから、私はベトナムで働ける(真っ赤なウソ、私にはこどもがいません)」
「結婚しているのか?」
「しているよー(ウソ)」
「ベトナム人の彼氏も作らないとなー」
「えー、いるよ、いるよー」
「そうか、じゃあ、今度はベトナム人と結婚だなー」
「あはは、二人の旦那さんだねー(大爆笑)」
なんて感じで。どんどん尋ねてこられる面倒くささをかわすため、ついでに会話練習をするために、適当なことを答えていました。私が暮らしていた町はフエ市とい小さな町で、当時日本人は10名ちょっとしか住んでいない頃だったので、そんなウソはあっという間にばれていたのですが・・。別に嘘つき日本人と言われたりしませんでした。
私のようなベトナム語練習法はおすすめできませんが、(ベトナム語だけでなく外国語習得の方法の1つとして)質問文をたくさん覚えて自分から質問できるようになるのがいいと思います。ベトナム人から質問攻めにあう前に、自分からベトナム人が聞いてくるであろうことを質問してしまうと、「あ、この人はベトナム語勉強しているね」と思ってもらえます。そして、相手の質問に答えられないと会話が止まりがちです。でも自分から質問ですると、そういったことも避けることができます。
ベトナム語では「相手の年齢や立場」を知ることが大事
ベトナム人がたくさん質問するには、彼らが好奇心旺盛なだけでなく、会話をする上で重要な情報を集めるためでもあります。
例えば、Aさん(女性・22歳)とBさん(男性・19歳)が会話をしているとします。
Aさん:Bさん、あなたは学生ですか?
Bさん:はい、私は学生です。
上の文章を英語にします。
Aさん:(Mr.)B、are you a student ?
Bさん:Yes, I am (a student).
上記の2つの会話、AさんとBさんの性別や年齢がかわった場合に、「あなた/私」、「you/ I」がかわるでしょうか?かわりません。
ベトナム語の会話であった場合は以下のようになります。
[Aさん(女性・22歳)とBさん(男性・19歳)]
Aさん:Em B (ơi)、em có phải là sinh viên không ?
Bさん:Vâng, em là sinh viên.
[Aさん(女性・22歳)とBさん(男性・19歳)]
Bさん:Chị A (ơi)、chị có phải là sinh viên không ?
Aさん:Vâng, chị là sinh viên.
●自分の姉くらい年の離れた女性と話をする時:自分がem、相手はchịになります。
●自分の妹/弟くらい年の離れた人(性別は問わない)と話をする時:自分がchị 、相手はemになります。
このように会話の相手との相対的関係で、「あなた/私」の言い方が変わります。これは一例で、色々なパターンの関係で、主格が変わります。オールマイティーに使える「tôi」という単語があるため、市販されているベトナム語のテキストでは、日本人なのだから「tôi」で代用できるものは代用してよいと書いてあるものもあります。確かにその通りです。でも、どうせなら、この主格の変化をマスターして欲しいと思うのです。なぜならば、ベトナム人との関係性をより深いものにできると思うからです。
相対的な関係で主格がかわるのは年齢だけではく、社会的立場、親愛の情などによって使い分けられたりもします。なので、使い分けられるようになると「ベトナム語勉強しているねー」感が増します。
ベトナム人の友人を作るために
私がベトナムに青年海外協力隊員として赴任していたフエ観光職業短期大学(以下、フエ観光短大)。私が赴任したころは、まだ小さな専門学校でした。小さいとはいえ、ベトナムに3つしかない中央政府直轄の基幹観光専門学校でベトナム中部の観光関連産業で働きたい人たちを対象にした教育・訓練、観光に係る調査・研究を行っている機関でした。校長先生はマイ先生。旧東欧で経済学の博士号を取った後に、トゥア・ティエンフエ省の観光局の幹部になり、フエ観光短大の校長先生に着任した人です。ベトナム語で女性の先生は、cô giáoといい、マイ先生と呼びたいときは、「cô Mai(=「マイ先生」の意味)」と呼びます。フエ観光短大の先生たちはcô Maiと呼んでいかたかというとそうではありませんでした。chị Maiと呼んでいました。これは、マイ姉さんという意味になります。おそらくはじめは、マイ先生がそう呼ばれることを希望をしたのだと思います。フエ観光短大で働く教職員は大きな家族のようなもので、みんながchị Maiのもとに集ってがんばっているという感じでした。chị Maiは、フエ省の観光産業で働く人たちの多くに「chị Dr.Mai(もちろんDr.は博士号をもっていることへの敬意です)」と呼ばれて尊敬されてもいました。ここでも、「cô」ではなくより近しく「chị 」が使われていました。
今でも私はマイ先生のことを「chị Mai」と呼んでいます。彼女とのメールのやり取りには「私の妹、ヨシコへ」といつもあります。そんな風にベトナム人と近しい関係を結んでいくためにも、折角なので、主格の変化をマスターして欲しいな、と思っています。
あと、主格がよくわからなくなった時の裏技があります。ベトナムでは、下の名前で呼び合います。私の名前は、タカギヨシコですが、ベトナム人にタカギと呼ばれたことは、ほとんどありません。本当にオフィシャルな場で紹介される時にフルネームを呼ばれたくらいです。日本語で「ヨシコは今日は学校に行っていました」などといい歳をして言うとちょっと変ですが、ベトナム語の会話では変には思われません(すごくオフィシャルな場所では変ですが・・)。「あれ?この人、何歳だっけ?」と主格に迷う場面があったら、「私」というところを自分の下の名前にしてしまうのも悪くない方法です。
最後におまけ。フエ観光短大には料理科もあります。もし日本のみなさんでベトナム料理を習ってみたい方がいらっしゃれば、現地で習えるようにアレンジも可能ですのでお知らせください。では、また来週。
投稿者プロフィール
- ベトナムのフエ市在住歴延べ6年。風人土学舎では、日本の事務局業務とフエ市での活動全般のコーディネーションを担当しています。
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