ジャックフルーツの思い出②
1つ前のブログに「ジャックフルーツの思い出」(2020年10月31日)を書きました。今回は、その記事で使った写真の思い出話です。
この半分に割られたジャックフルーツの実は、少数民族の集落で調査をしていた時にもらったものでした。この実をくれたのはパコ族のおばあちゃん。彼女はベトナム語を話すことが出来ませんでした。ベトナムは54の民族から成る多民族国家ですが、人口の86%は平野に暮らすキン族が占めています。あとの少数民族の多くは山間地に暮らす民族で、パコ族もその1つです。
ベトナムの社会で一般的に使われているのは元々キン族の言葉であるベトナム語であり、学校でもベトナム語で学習します。なので、少数民族の子どもたちのほとんどは学校ではベトナム語を話し、家では自分の民族の言葉を話すというバイリンガルです。父親と母親が異なる少数民族であれば、トリリンガルであったりもします。学校でのベトナム語による教育は、ベトナムがフランスの植民地であったころから始まりました。そのため、結構なお年寄りでもベトナム語を話すことが出来ます。しかし、高齢者、特に女性の中には学校に行く機会がなかったことやベトナム語を使う必要がないまま過ごしてきたためベトナム語を理解できない人たちがいます。2016年に調査で訪れた集落では無料のベトナム語教室を高齢の非識字者を対象に開講していたそうですが、2015年に閉講したとのことでした。高齢者にとって言語の習得は難しいものだった様子でした(2016年聞き取り調査の結果より)。
私たちは調査のためにインタビューしたおばあちゃんもそういった女性の一人でした。おばあちゃんが全くベトナム語を理解できないとは知らずお家を訪問し、全く話が通じませんでした。たまたま仕事の合間に家に戻ってきた娘さんに伺いたかったこと通訳して聞いてもらって、おばあちゃんの家を後にしました。すると、おばあちゃんは写真のジャックフルーツの実を抱えて私たちを追いかけてきました。おばあちゃんは何かや話してジャックフルーツを私たちに差し出してました。後から追いついてきた娘さんが、
「『今日は遠くから着てくれてありがとう。これはもらったものだけど半分もらってくださいな』、と言っています。また来てやってください」
と、通訳してくれました。
ベトナムの丘陵地から山間地で調査をしていると、こんな感じでものをもらうことが少なくありません。彼らは元々は森の恵みを大切に分け合いながら過ごしてきた人たちです。隣人と分け合うことが普通で、その延長で遠くから来た私たちにも分け与えたい、と思ってくれているのかな、と思ったりします。
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投稿者プロフィール
- ベトナムのフエ市在住歴延べ6年。風人土学舎では、日本の事務局業務とフエ市での活動全般のコーディネーションを担当しています。
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