【活動報告】活動地で起こっていること・高校生の学習事情

風人土(かぜひとつち)学舎の活動地であるフエ市、フーハウ地区でも新型コロナウイルス感染症拡大の影響は出ています。なので、どうしてもこのやっかいな感染症に関わる話を避けることが出来ない状況です。

ベトナム全土では日本ほどの感染者を出していません。しかしながら、日本よりも先に学校は休校措置が取られ、カフェやレストランなどに休業命令(要請ではありません)が出されています。そして、家族以外の人との接触禁止も「通達」として出されています。また、首都ハノイでは感染者監視用のアプリも導入されています(参考:VIETJO)。日本よりも医療体制が脆弱なため、早めに厳しい措置を取っている様子は日本よりも頼もしく思えたりします。

ナショナルスタッフのティエンさんからの報告によると、活動地のフエ市でも二人以上で川べりでほんの少しだけおしゃべりをしているだけでも、(日本の警察にあたる)公安に指導を受ける状況になっています。また、フエ市を訪れた観光客グループの中に感染者がいることが分かり、その人たちが観光に利用したシクロと呼ばれる自転車タクシーの運転手さんたちが隔離されることになったそうです。このシクロの運転手さんたちは、まさに私たちが活動している地区に暮らす人たちです。

 

自転車タクシー、シクロ

シクロと呼ばれる自転車タクシーは、庶民の人とモノを運ぶための手段であり、貧困地区の男性たちの代表的な仕事の一つ。しかし、近年の自動車の増加で台数を減らしています(2009年1月撮影)。

 

車の台数が増えた現在では、シクロは台数を減らしています。しかし、依然としてシクロは庶民の足でありモノを運ぶためにも利用されています。人やモノを運ぶシクロの運転手は、まさに肉体労働です。日銭稼ぎの仕事であり、なかなか収入も安定していません。その上に、隔離されてしまうとその間は仕事に出ることが出来なくなります。貧しい人たちが仕事の手段を奪われていく現実。でも、今は命を守る方が大切なのでみんなで耐えるよりありません。

 

ブタを運ぶシクロ

買われたブタが運ばれていく様子(2008月2月撮影)。

 

長引く学校の休校は、子どもたちの学習のやり方も変えています。ベトナム政府はテレビで授業を視聴できるようにしています。インターネットを通じた授業では端末を持っていないと視聴できないですが、テレビは貧困地区でも山間部の少数民族の村でもどこの家でも見かけると言っていいので、不公平のない方法だと思います。実際に、私たちのクラスに通っている生徒たちもテレビの授業を役立てているようです。

このような状況のため、私たちの学習支援クラスもお休みをすることにしました。チューターから生徒たちには課題を渡して、勉強のことや生活のことは電話でフォローする体制にして学習へのモチベーションを下げないように工夫しているところです。

そして、ベトナムも日本も若者たちは同じかな、と思うことがありました。ベトナムでもインターネットやスマートフォンが普及していています。日本では見たことがないような安価なスマートフォンも販売されていますし、iPhoneなどの中古もかなりの安値で手に入れることが可能です。一般的に料金はプリペイド方式なので、使いすぎて後から困ることもありません。家族の誰かがスマートフォンを持っていれば、インターネットを利用することは簡単な状況にあります。

私たちのクラスに通っている高校生の一人に誘われて、彼がFacebookでページ登録している学習ページを覗かせてもらいました。そのページでは、日本的に言うとカリスマ講師のような若い先生が、理系科目の課題を解いていく様子を動画配信していました。私たちのクラスに通っている高校生のほとんどが、家族のスマートフォンを使うなどしてこういった動画で自宅学習をしていることも分かりました。色々な方法を試しながら、勉強へのモチベーションを失わないでいて欲しいと願っています。

 

Facebookを学習に活かす、フエ

ベトナムでもインターネットで学習教材が配信されて、自宅学習に役立てられている(2020年4月)。

 

日本でも急激な生活の変化にストレスを抱えているこどもたちが増えている様子ですが、私たちの活動地でも同じ様子です。ティエンさんの生徒への聞き取りによると、外出自粛のため家族みんなが狭い家にいる状況が大変と答えている生徒たちもいます。世界の多くの場所で同じことに立ち向かっているこの状況。安全と健康を第一に、子どもたちの学習へのモチベーションを守っていきたいと思っています。

 

[参考]
・VIETJO、ハノイ:新型コロナ警告マップ・隔離監視アプリ導入(2020/03/20)
https://www.viet-jo.com/news/social/200319192219.html

投稿者プロフィール

Team Hue
チーム フエは、ベトナム中部のフエ市在住歴約6年の高木佳子とフエ市生まれのフィン・ティ・トゥイ・ティエン、そしてフエで暮らす高校生や大学生たちで構成されています。フエ市のことやベトナム人の暮らしの様子を写真や動画を添えて発信していきます。ご質問や「こんなことが知りたい!」というリクエストも受け付けております。