道端の小商い(2):アフリカの旅の途上で

コロナ禍の影響で、投稿からしばらく遠ざかっていました。私が所属する大学では新学期の開始が2ヵ月ほど遅れ、不慣れな遠隔授業の準備に追われ心にも体にも余裕がなくなっていました。学生らはもっと大変だったと思います。弱音を吐いてばかりではいられません。人びとの暮らしは日々営まれます。そこに、しなやかな生き方と希望を見出せるかもしれません。今回は、西アフリカ内陸部の道端の風景です。

屋台・ニジェール

写真1.朝ごはんの屋台(ニジェール)

私たちを含めて日々の関心事は食事です。普通は、毎日2食か3食、何かを食べていますよね。それに応えるために、街でも村落でも、あるいはあまり人が集まりそうにないところでも、朝昼晩、さまざまな食べ物が売られています。西アフリカの内陸部では、道端の食べ物屋台がそれを担っています。

街の宿の近くの路地には、朝ごはんの屋台が出ます(写真1)。バターを塗ったフランスパンにたっぷりの油で揚げたオムレツを挟んだものが人気です。バターを使うのが旧フランス領だった名残りです。旧イギリス領の東アフリカでは、バターではなく植物性のショートニング(マーガリン)が使われます。飲み物は、コンデンスミルクたっぷりのとても甘~いインスタントコーヒー。同じようにコンデンスミルクをいれた紅茶(リプトン社製のティーバッグ)を好む人もいます。カフェオレカップというか、小さめのボウルになみなみと入っています。

揚げパン屋さん・ブルキナファソ

写真2.村はずれの揚げパン屋さん(ブルキナファソ)

農村に行くと、村はずれや市場の近くで揚げパンを売っています(写真2)。水を入れた小麦粉を練って、ちょっとだけ砂糖を入れて、茶色っぽくなるまで豪快に揚げます。とても素朴ですが、美味しい。幼い子どもをつれたお母さん方が主役です。売り上げは暮らしを支える大事な収入源になります。フィールド調査のため車で長い距離を移動するとき、ご飯屋さんに入って食事をとれないことがしばしばあります。

ヤギやウシの炭火焼きの屋台・ブルキナファソ

写真3.ヤギやウシの炭火焼きの屋台(ブルキナファソ)

頼りになるのが炭火焼きの屋台です(写真3)。肉はヤギやウシ、ニワトリ。炭火の上に落ちた脂の煙が肉に戻り、食欲をそそる匂いを付けます。焼きあがったらナイフで食べやすい大きさに切り、砕いた岩塩やトウガラシでつくったペーストを添えて紙に包んでくれます。500gとか1㎏単位で買います。肉だらけの昼食です。ハエがたかっていることもありますが、焼きたてですので気にしません。経験的には、牧畜民の多い地域や牧畜民が営んでいる屋台の焼肉は、はずれが無いようです。

どさっりの豆ごはん・ニジェール

写真4.どさっりの豆ごはん(ニジェール)

遠い地域にあって、日本にあるような懐かしい味に出会うことがあります。それは、ニジェールの豆ごはん(写真4)。ササゲと米を炊き上げたもので、砕いた岩塩をかけて食べます。豆の香りのするあっさりとした味わい。現地の人も大好きみたいで、大釜で炊いた豆ごはんがどこからか運ばれてきて屋台に置かれます。

道端のご飯屋台は、人びとの暮らしの糧であり、楽しみであり、私たちのような訪問者にとってその土地を知るための窓なのです。

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投稿者プロフィール

田中 樹
田中 樹風人土学舎 代表
風人土学舎代表。摂南大学 農学部 食農ビジネス学科 教授(環境農学研究室)、ベトナム・フエ大学名誉教授。専門は、環境農学、土壌学、地域開発論。アフリカやアジアの在来知に学び、人びとの暮らしと資源・生態環境の保全が両立するような技術や生業を創り出す研究に取り組んでいます。