モノの運び方もいろいろ
2020年5月18日の田中さんのブログ「道端の小商い(1):アジアの旅の途上で」に出てくる下の写真が好きなんです。かわいいなぁ、と思うのです。
竹かごに収まっているのは黒ブタの子ぶた、黒子ブタとここでは言いましょう。きちんと鼻先が出るようになっています。加えて、竹かごにはちゃんとぶら下げられるように持ち手も編み込まれています。この竹かごに入った黒子ブタを買った人はバイクで帰るのかな、歩いて帰るのかな、どのくらいまで大きく育てるのか、どうやって食べるのかな・・と、色々想像してしまいます。ベトナムでも、このような形で小さな家畜を生きたまま売り買いする様子を何度どとなく見てきました。そんな思い出の1つを書きたいと思います。
ベトナムの丘陵地にある少数民族の集落で調査をしていた時のことです。その日は集落のみんなが集まる会合があって、会合の後はみんなで遅い朝ごはんを食べるから一緒に食べようと言われていました。若い女性たちは、会合の間に食事の準備をするとのことで自分の家からお鍋を持って村長さんのお家に向かっていました。
会合開始まで時間もあるので、食事の準備でも手伝おうかと若い女性たちの後を追っている時に、よく知っているのおじいちゃんに出会いました。朝の挨拶をしてどこに行くのかの聞くと「Gio(読み方:ヤー)のところに豚をもらいに行くんだよ。一緒に行くかい?」と言われました。ヤーさんはこのおじいちゃんの弟で、黒ブタを育ている人でした(どうしてヤーさんが黒ブタを育ているかは、また別の機会に)。ヤーさんは放牧性の養豚をしていました。黒ブタが放されている場所は、小川を渡った反対岸の斜面の方にありました。
小川のところで、朝のブタを世話を終えたヤーさんに出会いました。おじいちゃんたちは自分たちの民族の言葉で話を始めました。何やらもめだす二人。必死でお願いするおじいちゃん。仕方ないなぁ・・という顔をするヤーさん。ヤーさんに通訳してもらったところ、おじいちゃんの娘はバスで約3時間離れたさらに山の中の集落に嫁いでいてその日の夜にお祝いの宴がある、その宴の席で黒ブタを出したと言っているから1頭頂戴、という話でした。ヤーさんはこの話をこの時まで聞かされていなかった、とのことでした。そして、おじいちゃんは自分で黒子ブタを運べないので、午前中1本しかないバスに黒子ブタを載せたい、と言っていたのでした。
ヤーさんは「他の人がいたらブタが寄って来ないから、ここで待っていて」と言い、おじいちゃんと私たちに小川のそばで待っているように言いました。
しばらくすると「ブヒィーーーーーーーーー!!!!!、ブヒィーーーーーーー!!!!!」と、黒子ブタの断末魔か・・・と思える声が山にこだましました。しゃがんでいたおじいちゃんは、すくっと立ち上がり、小川を渡って斜面を登って行きました。黒子ブタとおじいちゃんとヤーさんが格闘しているであろう音が聞こえ、やがて静かになりました。
ついに、おじいちゃんはお米の空き袋に入れた黒子ブタをかついで坂を下ってきました。
そして、おじいちゃんは黒子ブタが息が出来るように(緑色の)お米の空袋に穴をあけ、暴れないように紐で縛りました。
バスはフエ市内からラオス国境までを走っています。マイクロ・バスで、停留所があるわけではなく大体の時間になったら道でバスがやって来るのを待って乗るという方式です。このバスは、ヒトも運べばモノも運びます。モノの運搬を頼む時、日本の宅配便のように送り状とか預かり状があるわけではありません。「●●で〇〇さんが引き取るからお願いします」と頼むだけです。輸送代金はバスの運転手さんとの交渉で決まります。こういった「生モノ」も運んでくれます。この日おじいちゃんは、ラオスとの国境に近いアルーイ・タウンにあるバス・ターミナルに娘が引き取りに来るからよろしく、とバスの運転手さんに黒子ブタを託したのでした。
このような物流の方法が、まだまだベトナムの山の中では活きています。
投稿者プロフィール
- ベトナムのフエ市在住歴延べ6年。風人土学舎では、日本の事務局業務とフエ市での活動全般のコーディネーションを担当しています。
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