ベトナムの大学に外国で出版された本を置いてもらうために~検閲~

『しらすどん』

『しらすどん』最勝寺朋子(著、イラスト)岩崎書店

やっと新型コロナウイルスの感染拡大が下火になってきた日本。次はオミクロン株ですか・・。一方、風人土(かぜひとつち)学舎の活動地のあるベトナム中部のフエ市ではオミクロン株はまだ検出されていない様子です。しかし、地区によって感染経路不明のクラスターが発生したために日常的な行動に制限がかかっています。行動制限は、家のある地区以外に出てはいけないとか、学校が一部休校になったりとかいった制限になります。そして、この経路不明のクラスターの1つが卸売市場で発生したため(2021年11月14日「卸売り市場でクラスター?(ベトナム・フエ市)」もお読み頂けるとうれしいです)、市場で働いている人たちは頻繁にPCR検査を受けることを義務付けられている様子です。1日も早く日常が戻ってくることを願っています。

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私がベトナムで暮らしていた間、フエ観光職業短期大学に2年ちょっと、フエ大学フエ農林大学に約3年に席を置いていました。そのどちらにも共通だったのは、図書館の蔵書の数が少ないことでした。具体的に何冊であったかはわからないのですが、図書館の本は「図書館で読むもの」で「図書館で本をかりて熟読する」という感じでもありませんでした。図書館に出入りする学生の数も日本に比べて極端に少なかった印象を持ちました。

現在、風人土学舎の活動でフエ外国語大学日本語科(以下、フエ外大)の先生や学生のみなさんと協働して、日本の絵本をベトナム語に翻訳して、ベトナムの子どもたちの読み聞かせに活用する活動を続けています。翻訳した絵本は、フエ外大に置いてもらうように依頼しています。それは、日本語を学ぶ学生さんたちに実際に日本の絵本を手に取ってみてほしいという思いがあってのことです。しかし、これがなかなかハードルが高い様子になっています。図書館に置いていいかどうかは、「検閲」が必要ということでその作業を進めてもらっています。

ベトナムは社会主義の国なので、検閲があることは覚悟はしていました。そのため、あらかじめ宗教的な内容を含む絵本、(そのような本を探す方が難しいのですが)政治や人権に直接関わるように絵本、肌の露出が多い絵本・・・などは選ばないようにしていました。他にどういった種類のものが検閲でひっかかるのか予想することができなかったので、今後どうなるかわかりませんが・・。ベトナムの教育機関の図書館に蔵書が少なかったのは、検閲の問題もあったのかな・・と思ったりしています。

ベトナムには出来るだけ多くの本を送りたいと思っているので、主には中古絵本を送っています。ただ、「どうしてもこの本は送りたい」と思う本や「一緒に読んで、是非、ベトナム人から感想が聞きたい」と思う本は、新たに買って送るようにしています。年明けには何冊か送りたいと思っている絵本の中に、『しらすどん』(最勝寺朋子(著、イラスト)岩崎書店)という本があります。先ず、ベトナム人には「しらす」って?、「どんぶり」って?ってところから説明しないといけないと思うのですが、丁寧な絵を味わい楽しんで欲しいのと、「食べ物を大切にする気持ち」、「尊い命を頂戴している」ということを振り返って欲しいなぁ、と思っています。

こういった人が丁寧に暮らしていく上で大事にしたい感覚のようなことを伝える絵本は検閲を無事に通過して欲しい・・と願っています。

投稿者プロフィール

高木佳子(Takagi Yoshiko)
高木佳子(Takagi Yoshiko)風人土学舎 日本事務局担当
ベトナムのフエ市在住歴延べ6年。風人土学舎では、日本の事務局業務とフエ市での活動全般のコーディネーションを担当しています。