ベトナムの巫女?・イタコ?~ディエン・ホン・チェン(Điện Hòn Chén)の思い出~
先月、このホームページの写真ギャラリーにベトナムの「トゥアティエン・フエ省・フエ市内の風景」として公開した写真の中に、フォーン河でボートレースを観ている人たちの写真がありました。下の写真です↓。
これを見たナショナル・スタッフのティエンさんのお友達から「ディエン・ホン・チェン(Điện Hòn Chén)の写真ですか?」というコメントをもらいました。残念ながら、この写真はそうではありません。ディエン・ホン・チェンは、直訳するとホン・チェン社(もしくは、殿)となるお社の名前です。ベトナム人がフエのフォーン河にたくさんの人がいるのを見てディン・ホン・チェンを連想するには訳があります。ちょっと独特のお祭りを行うお社なのです。私は、1回だけひょんなことからこのお祭りを見に行ったことがあり、今回はその思い出を書きたいと思います。あまりに独特だったので、詳しくこのお社のことを調べずに現在に至っていて、これから調べてみたいフエのことの1つです。
ここからの写真は、2007年8月20日にディエン・ホン・チェンのお祭りで撮った写真です。この日は、私が現地調整員をしていたJICA草の根技術協力事業の前身プロジェクトの現地調整員Iさん(日本人)、Iさんのクールビューティーな秘書のAさんとドライバーのHさん(共にベトナム人)、現地調査のために滞在していた京大の院生と私(当時、青年海外協力隊員)の5名で郊外に調査に出かけていました。調査後、フエ市内に戻ろう車を走らせているとたくさんのバイクが山の方に向かっていくのに出くわしました。ドライバーのHさんが「今日からディエン・ホン・チェンのお祭りだから、みんなバイクで行くんだ。折角だから行ってみる?」と、言いました。秘書のAさんは「亡くなった人の霊を呼び出してくれる人がたくさん集まっているの。霊と話が出来るの」と説明してくれました。
霊を呼び出して話をする・・・、「イタコ?」と日本人の私たちは連想しました。ドライバーHさんも秘書Aさんも行きたそうな様子を隠せない感じだったので、私たちはディエン・ホン・チェンに向かうことにしました。
ディエン・ホン・チェンは、フォーン河に面した丘の中腹にあります。車やバイクから降りて、渡し舟で河を渡る必要がありました。もくもくと線香の煙が立ち上り、たくさんの舟が泊まっている様子が目に入ってきました。
渡し舟の乗り場近くには、物売りの人たちがたくさん出ていました。下の写真は、この時期がシーズンのザボンを売っている人たちです。写真には残っていなかったのですが、生きた魚がたくさん売られていました。これは食べるためではなく「放すため」に売られていました。買った後の魚を河に放すことによって、魚の命を助けた、徳を積んだという意味になるとのことでした。
渡し舟は質素はものでした。たくさんの人で賑わっているため、複数の舟が乗れるだけの人を乗せて往復している様子でした。もちろん私たちもこの渡し舟に乗ったのですが、転覆しないか不安だった気持ちを今でも覚えています。
そして、舟を降りた対岸にはドラゴンボートがぎっしり停泊していました。
上の写真のように舳先が龍の形になっているドラゴン・ボートはフエの名物で、普段は観光客を乗せてフォーン河を往来しています。しかし、このお祭りの時期になるとほとんどのボートが借上げられて、ディエン・ホン・チェンの岸に集結していました。このドラゴン・ボートの中には、霊と話ができるという女性が乗っていてお金を支払うと霊を呼び出して話をしてくれるのでした。
上の写真のようにどの舟もたくさんの人が順番を待っているので、なかなか中の様子を見ることは出来ませんでした。しかし、ドライバーのHさんと秘書Aさんはグイグイと人かき分けてくれて少しだけ中の様子を見れるポジションに行けました。すると舟の中には、白装束のおばあさんが何やらブツブツと話しているのを真剣な面持ちで聞いている人たちがいました。ドライバーのHさんの説明では、霊があばあさんの中に入ってきて話をし出す、とのことでした。
霊媒のおばあちゃんを眺めているだけでは危険な渡し舟に乗った意味がない、と5人でディエン・ホン・チェンを目指して丘を登ることにしました。たくさん人が日本のよりも長いベトナムの線香に火を点けたものを持って丘を登っていてました。ベトナム全土から人が来ると言われるお祭りなのでたくさんの人で賑わっていました。これはとてもお社には近づけないと判断し、そこそこのところで引き返すことにしました。いや、実は記憶があいまいで本当はお社まで行ったのかもしれないのですが、人酔いしてしまったのかあまり覚えていません。とにかく、お社ではおみくじのようなものをもらえるためそれを手に入れたい人でごった返していたのでした。
そして、帰りの渡し舟を待っている間も、ドライバーのHさんと秘書のAさんはドラゴン・ボートの中を見たくて見たくて仕方ないという様子でした。「いくらくらいかかるの?お願いしたらいいのに?」と尋ねると二人とも「そんな怖いことできない」、「結構高いから払えない」と答えるのですが、体は見たくて見たくて仕方ない様子で、どんどんとドラゴンボートにひき寄せられていくのでした。二人のベトナム人の気が済んだところで渡し舟に乗り引き返したのでした。
結局、霊と話ができるという巫女というか、(日本の)イタコのような女性たちが普段はどこにいるのかや、このお祭りの本当に意味などはよく調べずにきてしまいました。もう少しきちんとお話できるように調べてみたいと思っています。今回のところは、巫女というか、イタコというかもベトナムに存在していることを、ベトナム人は結構こういうものが好きな人が多いことを知って頂けたらいいかなと思います。
投稿者プロフィール
- ベトナムのフエ市在住歴延べ6年。風人土学舎では、日本の事務局業務とフエ市での活動全般のコーディネーションを担当しています。
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