こころを動かすもの-ホイアンのカフェにて-
フィールド研究や実践活動に関わっているといろんなことに出会います。それは時として、心を大きく動かすことがあります。
2017年3月にベトナム中部のホイアンを訪れた時のこと。世界文化遺産となっている旧市街の一角の古民家に、とても雰囲気の良いカフェがあります。そこでは、聴こえない・話せない青年らが働いています。
どっしりとした一枚板のテーブルに案内され、有機栽培されたというコーヒーと手作りのクッキーを楽しんでいると不思議な感覚に気が付きました。観光客で賑わう通りの喧騒が遠のき、静けさと吹き抜ける涼しい風、カップや皿が触れ合う音。顔をあげると、スタッフがとびっきりの笑顔と目で語りかけてきます。
この心地よさは何だろう。ここで働くスタッフの温かくも凛とした雰囲気はどこから来るのだろう。
その雰囲気の中、これまで取り組んできたフィールド研究や実践活動を反芻している自分がいました。そこに、いわゆる社会的に弱い立場の人びとが主役になって生き生きと働くイメージはあったかという自問。
とても微力だけれども、新たな何かをしなければと思った瞬間でした。
☆この記事は、風人土学舎のFacebookに2019年8月1日に掲載したもののリライトです。記事の中の写真は、この記事の著者によって撮影されたものです。
投稿者プロフィール
- 風人土学舎代表。摂南大学 農学部 食農ビジネス学科 教授(環境農学研究室)、ベトナム・フエ大学名誉教授。専門は、環境農学、土壌学、地域開発論。アフリカやアジアの在来知に学び、人びとの暮らしと資源・生態環境の保全が両立するような技術や生業を創り出す研究に取り組んでいます。
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