私たちは、自然や社会や時間の流れの中でさまざまなつながりを持っています。それを一言で表現する言葉を探す中で出会ったのが、「風土」です。「風土」とは、長い年月にわたり織なされてきた人びとの暮らしとそれを取り巻く自然や森羅万象との関わりやその現われです。そして、この二文字の間には「人」が隠れていることに気が付きます。「風と人と土」です。
このことに由来する風人土学舎は、人びとのつながりや自然・生業・文化との関りを知り、それらが共生する未来を目指す、研究者と実務者の集いの場です。
ここ半世紀の間に顕在化した地域・地球環境問題は、「人間の生存と資源・生態環境の不均衡」に起因する様々な危機や諸問題の集合です。その解決に向けて、あるべき未来社会の姿を描き、そこへ至る道を探ることが求められています。これらの営みは、必ずしも「地球規模」である必要はなく、むしろ同じ時代に暮らす私たち個々が主体者となり実践する日々の暮らしに根差す取り組みこそが重要です。
その際に常に大切にしたいことは、社会的に弱い立場にある人びととともにあるという意識です。これは何も綺麗ごとを言おうとしているわけではありません。問題解決や未来社会に向けた活動では、社会的に影響力があるような声が大きい人びと(有識者や専門家、為政者など)の考えが知らず知らずのうちに反映されます。声すら上げられない人びとの想いは、そこに埋没してしまいがちです。その存在をないことにして描かれる解決策や未来社会の姿は魅力的ではありません。
風人土学舎に集う私たちは、これまでに、アジアやアフリカや日本国内での研究あるいは実践活動-そして広くは日々の暮らし-を通じて、さまざまな人々と出会い、学び、考え、喜び、哀しみ、感動などを共にしながら成長してきました。
その経験や想いを、風人土学舎の取り組みを通じて、ささやかながら社会に還していきたいと
考えています。
風人土学舎 代表
田中 樹