【越日交流の準備】ベトナム人の人との距離について①
私たち、風人土(かぜひとつち)学舎とフエ外国語大学日本語科(以下、フエ外大)の先生と学生さん有志で進めている日本の絵本翻訳ミニプロジェクト。最終的に、翻訳した絵本は家庭になんらかな課題のある子どもたちを対象とした学習支援教室で使いたいと考えています(学習支援活動を含む風人土学舎の活動は「教育環境改善プロジェクト」もお読み頂けるとうれしいです)。
出来るだけ息の長い活動に育てて行きたいという願いもあって、日本側の活動理解者の輪も作りたいと思っています。その下準備にもなって欲しくて、越日双方の大学生の交流をやりたいと考えました。コロナ禍での交流のため、先ずはオンラインでのスタートです。また、交流の内容はフエ外大の学生さんたちの日本や日本語理解にもつながることになれば、なおいいかと考えています。
そこで、フエ外大の学生さんから「日本の大学生への質問」を集めてみました。さすが、熱心に日本語を学んでいる学生さんたちだけあってたくさんの質問を出してくれました。それらの質問の中には、日本の大学生には簡単に回答できないかもしれないものも含まれていました。そのため、そういった質問への答えを考えるのに役立ちそうなことをここに書くことにしました。
今回は、越日の比較をすることで話し合いする材料になりそうなことを書いてみたいと思います。
ベトナム人の大学生からの質問①
「日本の若者のと親との関係はどうですか。日本人は親にあまり連絡していないと言われています。その理由はなんですか?」
この質問は、世代や家庭によってかなり答えが変わってくると思います。風人土学舎のメンバーの大半は「昭和」世代。今の大学生さんとは、かなり意見が違うように感じます。最近は、「親は友人」と考えてる若い人が多いと聞いたり、大学受験に保護者の方が付き添われるケースが増えているといったニュースを目にしたり、一世代前とは「親と子の距離感」が異なっているように感じます。また、LINEなどのツールで頻繁に連絡を取りあえているケースも多いでしょう。日本の大学生の現状は、大学生自身から回答してもらうのがよさそうです。
ちょっと視線を換えて、どうしてベトナムの大学生はこの質問をしたいと思ったかを考えてみました。考えられたのは、ベトナム人の家族との距離感が大変に近いことでした。
☆☆☆
私は、JICA青年海外協力隊員としてベトナムに赴任する前に、日本でベトナム人の先生からベトナム語を学びました(ちなみに、この先生はベトナム戦争が終わった1975年には日本の大学に留学していた方です。なので、この先生の感覚も今のベトナム人の若者の感覚とは違うかもしれません)。その先生に、
「日本人は、『一人にさせて』と簡単に言うけれど、ベトナムではそういうことを言うと変わった人だと思われるから言わない方がいい」
と、習いました。それに付け加えて、
「『Nhớ Nhà 』(越語・日本語の意味:家が恋しい)でないか、兎に角よく尋ねられる」
と、教えてもらいました。実際に、約6年間ベトナムで暮らした中で、「Nhớ Nhà không?」(日本語の意味:家が恋しくない?)という言葉を至るところで投げかけられました。ベトナム人の中に「外国に一人で来るなんてさびしいに違いない。家族と離れているなんて、切ないに違いない」という思いが、この言葉には含まれていたように感じます。大家族が同居したり、近くに暮らしていることが当たり前のベトナムでは、家族が少しでも離れて暮らしたら頻繁に連絡を取り合うことが当たり前と思っているのでしょう。
この「nhớ 」(越語発音:ニョー)の意味は、日本語だと「恋しい」、英語だと「miss」となります。英語で「I miss you (会えなくてさみしいわ)」という表現がありますが、ベトナム語で言うと『em nhớ cô』(日本語の意味:先生が恋しいです・主語(先の例文は「em」)と対象となる相手(先の例文は「cô」)は、関係性によって単語が変わります)となり、近しく思っている相手によく使われます。日本語だと先生や親しい友人には使わない表現かと思いますが、ベトナムでは「自分に近いと思っている人」には情を込めて使われていました。
ベトナムできちんと言葉にして表現されるこういった思いもあって、日本の大学生は「Nhớ Nhà」と思わないのか聞いてみたいのかな、と想像しました。実際の交流では、日本人とベトナム人の人との距離感について1つ1つ例を挙げて教え合うのもいいかもしれません。
次回は、ベトナム人の物理的な人との距離感について書きたいと思います。
投稿者プロフィール
- ベトナムのフエ市在住歴延べ6年。風人土学舎では、日本の事務局業務とフエ市での活動全般のコーディネーションを担当しています。
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